退職準備を進める中で、避けて通れないのが社会保険(健康保険・年金)をどうするかという問題です。
以前の記事(会社を辞める前に必ずやるべきこと9選)でも軽く触れましたが、今回は実際に自分のケースに当てはめて、3つの選択肢を年収800万円という条件で比較計算してみました。結果、長期的には想定していなかった方法が一番有利だとわかったので、その過程を共有します。
⚠️ ご注意
保険料は標準報酬月額・お住まいの自治体・年齢・前年所得などによって変わります。本記事の金額はあくまで一例・概算です。実際の判断は必ずご自身の条件で計算し、自治体窓口や社会保険労務士に確認してください。
【目次】
- 退職後の社会保険、3つの選択肢
- ①任意継続|会社の健康保険をそのまま使う
- ②国民健康保険|最もオーソドックスな選択肢
- ③法人から給与をもらい社会保険に加入する
- 年収800万円で比較してみた結果
- なぜ法人からの社会保険が有利になるのか
- まとめ|自分の条件で必ず計算を
退職後の社会保険、3つの選択肢
会社員を辞めると、これまで会社が半分負担してくれていた健康保険・厚生年金から外れることになります。私のケースで検討対象になったのは、次の3パターンです。
- ①任意継続:退職前の健康保険を最大2年間そのまま継続する
- ②国民健康保険:自治体の国民健康保険に加入する(年金は国民年金)
- ③法人からの社会保険:自分の資産管理法人から給与をもらい、会社員と同じ社会保険(健康保険+厚生年金)に加入する
それぞれの特徴と、年収800万円を想定したときの概算を見ていきます。
①任意継続|会社の健康保険をそのまま使う
任意継続は、退職した会社の健康保険(協会けんぽ等)に、退職後も最大2年間加入し続けられる制度です。これまで会社が払ってくれていた分も自分で負担するため、在職中の約2倍の保険料になるのが基本です。
ただし保険料には上限があり、令和8年度の協会けんぽでは標準報酬月額の上限は32万円に設定されています。年収800万円(月収換算で約66万円相当)だった人の場合、実際の月収よりかなり低い32万円を基準に保険料が計算されるため、思っているより安く済むケースもあります。
📌 任意継続の概算(東京都・年齢40〜64歳の場合)
標準報酬月額:上限の32万円で計算
健康保険料:32万円 ×(健康保険料率+介護保険料率)≒ 月額3.6〜3.7万円程度
→ 年額:約43〜44万円
※任意継続は健康保険のみが対象。年金は別途「国民年金」への加入が必要(2026年度は月額1.7万円程度=年額約20万円)
合計:健康保険+国民年金で年間およそ63〜64万円程度という計算になります(被保険者の年齢や前職の標準報酬月額によって変動します)。
注意点として、任意継続は会社の健康保険のみが対象で、厚生年金は引き継げません。年金は別に国民年金へ加入する必要があります。
②国民健康保険|最もオーソドックスな選択肢
会社を辞めた人の多くが加入するのが国民健康保険です。保険料は前年の所得を基準に、お住まいの自治体ごとに計算されます。
ポイントは、国民健康保険の保険料には不動産収入や投資収入などを含めた「総所得」が反映されることです。会社員時代の給与だけでなく、副収入がある人ほど保険料が跳ね上がりやすい仕組みになっています。
📌 国民健康保険の概算(東京都内・年収800万円相当の場合)
課税所得が400万円程度の場合、年間保険料はおおむね60〜70万円程度になる自治体が多い傾向があります。
年収800万円(課税所得がさらに高い場合)では、2026年度の賦課限度額(年間109〜110万円)に近づく、または達する可能性があります。
→ 年額:概算70万円台〜上限の110万円程度
※国民年金は別途、年額約20万円が必要
合計:国民健康保険+国民年金で年間90万円台〜130万円程度になる可能性があり、3つの選択肢の中で最も高額になりやすいのが特徴です。特に不動産収入などの副収入が多い人ほど、この傾向が強くなります。
③法人から給与をもらい社会保険に加入する
私が現在、資産管理法人の代表を務めていることもあり検討したのがこの方法です。法人から自分自身に給与(役員報酬)を支払い、会社員と同じ健康保険・厚生年金に加入するという選択肢です。
ポイントは、社会保険料は「役員報酬の金額」のみを基準に計算されるという点です。不動産収入や投資収入が法人や個人にいくらあっても、給与として受け取っていない部分は社会保険料の計算に影響しません。これが国民健康保険との最大の違いです。
社会保険への加入義務が発生するのは、標準報酬月額が8万8,000円以上になった場合です。役員報酬をこのライン付近に設定すると、保険料を大きく抑えることができます。
📌 法人からの社会保険の概算(東京都・役員報酬を月8.8万円に設定した場合)
健康保険料(会社負担+個人負担の合計):月額 約8,700円
厚生年金保険料(会社負担+個人負担の合計):月額 約16,100円
合計:月額 約24,800円
→ 年額:約30万円程度(健康保険+厚生年金の両方を含む)
会社と個人、どちらの財布から払っても結局は自分(自分の法人)のお金であることを考えると、実質負担は合計額で考えるべきです。それでも年間30万円程度に収まるのは、他の2つの選択肢と比べてかなり低い水準です。
さらに、任意継続や国民健康保険では年金が「国民年金」になるのに対し、法人からの給与であれば厚生年金に加入できるため、将来の年金額という観点でも有利になります。
年収800万円で比較してみた結果
| 選択肢 | 年間負担額(概算) | 年金の種類 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ①任意継続+国民年金 | 約63〜64万円 | 国民年金 | 最長2年間のみ利用可能 |
| ②国民健康保険+国民年金 | 約90〜130万円 | 国民年金 | 不動産・投資収入が多いほど高額になりやすい |
| ③法人からの社会保険(健康保険+厚生年金) | 約30万円 | 厚生年金 | 役員報酬の設定額に応じて変動。将来の年金額も有利 |
※上記は東京都・40〜64歳・年収800万円相当を想定した概算です。実際の金額は個人の条件や自治体により変動します。
この比較から、私のケースでは③の「法人から給与をもらい社会保険に加入する」方法が、コスト面でも将来の年金額の面でも最も有利という結論に至りました。
なぜ法人からの社会保険が有利になるのか
理由はシンプルです。国民健康保険は「総所得」に対して保険料がかかる一方、社会保険(健康保険・厚生年金)は「給与(役員報酬)の金額」にしか保険料がかかりません。
不動産収入や配当収入などが多い人ほど、国民健康保険では保険料が跳ね上がる一方、法人から低めの給与を受け取る形にすれば、その他の収入は社会保険料の計算対象から外れます。これは個人事業主が法人化(マイクロ法人化)して社会保険料を抑える手法と同じ理屈です。
もちろん、役員報酬を低く設定すれば所得税・住民税の負担バランスも変わりますし、将来もらえる厚生年金の額も報酬額に応じて変わります。「社会保険料を抑えること」と「将来の年金額を確保すること」のバランスを考えながら、報酬額を設定する必要があります。
まとめ|自分の条件で必ず計算を
退職後の社会保険は、選択肢によって年間で数十万円単位の差が生まれます。今回のケースでは、
- 任意継続:約63〜64万円/年
- 国民健康保険:約90〜130万円/年
- 法人からの社会保険:約30万円/年
という結果になり、法人から給与をもらい社会保険に加入する方法が長期的に最も有利という結論になりました。
ただし、これは資産管理法人を持っている私だからこそ取れる選択肢です。法人を持っていない方は任意継続と国民健康保険の比較が中心になりますし、お住まいの自治体・年齢・前職の給与水準によっても結果は変わります。
皆さんも退職前には、自分の条件でそれぞれの選択肢を必ず計算してみることをおすすめします。数十万円の差が出ることもあるので、知っているかどうかで大きく変わってくるポイントです。
※本記事の金額は2026年6月時点の制度・概算に基づくものであり、個人の状況や自治体・制度改正により異なります。実際の手続き・判断にあたっては、お住まいの自治体窓口、年金事務所、社会保険労務士・税理士等の専門家に必ずご確認ください。


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