橘玲『どうしたらお金持ちになれるの?』書評|子どものために買ったら、自分が一番考えさせられた

書籍

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📖 書誌情報

書名:親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの? ──人生という「リアルなゲーム」の攻略法

著者:橘玲

出版社:筑摩書房

発売日:2024年11月25日

定価:1,760円(税込)/ 192ページ

対象年齢:小学校高学年(10歳以上)から

橘玲さんの本は、ずっと読み続けてきました。

『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』を読んで以来、出るたびに手に取る著者の一人です。テーマはお金・人間・社会の構造——どの本も、「なんとなくそう感じていたこと」を根拠と言葉で整理してくれる感覚があって、読み終えるたびに何か引っかかるものが残ります。

今回、子ども向けの本が出たという話を知りました。

自分のために買うのではなく、子どものために買おうと思いました。「小学生でも読める本なら渡しておけばいい」くらいの気持ちで購入し、当初は自分でじっくり読むつもりはなかった。

でも、少し開いてみたら止まらなくなりました。

子どもに説明するための具体例で、普段の橘玲さんの著作のテーマが書かれています。むしろ難しいことをシンプルに説明してある分、大人にとっても頭が整理される。気づけば自分が最後まで読んでいました。

この記事では、特に印象に残った「人生で役に立つ7つの法則」を中心に、私自身の仕事・投資・子育ての経験を重ねながら書きます。

【目次】

  1. この本はどんな本か
  2. 7つの法則——私が感じたこと
  3. 子ども向けなのに、大人にも刺さる理由
  4. 私が子どもに一番伝えたいこと
  5. 親子で読むなら、こう使いたい
  6. この本が向いている人・向いていない人
  7. 他のお金の本との比較

この本はどんな本か

タイトルだけを見ると、投資や貯金を教える本に見えます。でも、読んでみると全然違いました。

本の構成は8つの「ゲームステージ」になっています。ステージ1でトレードオフを学び、ステージ2で複利を理解し、ステージ3で限界効用(楽しさがどう変化するか)を考える——という流れで、お金の仕組みを一つずつ積み上げていきます。それぞれのステージに「レベル」があって、段階的に読めるようになっています。

ただ、この本が面白いのは、お金の説明で終わっていないことです。

人間関係の作り方、時間の価値、努力の限界、才能と仕事の選び方、失敗からの立ち直り方——こういったテーマが、お金の話と自然につながりながら説明されています。橘玲さんの他の著作でも扱われているテーマですが、ここでは子どもでも理解できる具体例で書かれているため、むしろ大人にとっては「整理」としての読みやすさがあります。

そして、本の最後に「特別ステージ」として収録されているのが、「人生で役に立つ7つの法則」です。ここが私には最も響きました。

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7つの法則——私が感じたこと

① 100倍の法則

自分に起きたことは、自分の中でとても大きく感じる。でも他人が同じことを経験しても、そこまで強くは感じない——という話です。

読んですぐに、思い当たることが浮かびました。

仕事の中で、軽いつもりで言った一言が相手を傷つけていたこと。逆に、自分がずっと気にしていた言葉を、相手はすっかり忘れていたこと。どちらも経験がありました。

感覚の差は、悪意の有無とは別のところにあります。「自分にとっての1」が相手には「100」として伝わることがある。それを知っているだけで、言葉の選び方が少し変わります。「正しいことを言う」のと「どう伝わるかを考える」のは、別のことだということです。

子どもにも、言葉の正しさだけじゃなくて、相手にどう届くかを意識してほしいと思っています。今この言葉を言うことで、自分は相手に何を伝えたいのか。その問いを持つだけで、人間関係の多くのすれ違いは避けられると感じます。

② 「奇跡は起きない」の法則

この法則は、私の投資経験と直接つながりました。

不動産投資をしていると、「この物件なら間違いない」と思いたくなる瞬間があります。利回りが高い、立地が良い、管理がしっかりしている——ポジティブな材料ばかりに目が向いて、「自分だけはうまくいく」という感覚になりやすい。株式でも同じで、「今度こそは」という思い込みは何度か経験しました。

著者の考え方の核心は、「自分は特別な存在ではない」という前提に立つことだと私は理解しています。自分に奇跡が起きるなら、他の誰かにも起きるはずです。逆に、他の誰かがやらかすようなミスを、自分がしない保証もない。

投資での実感として言うと、「成功するシナリオを考えること」より「失敗したときにどうするかを考えておくこと」の方が大切だと感じてきました。出口をどう考えるか、損切りの基準を持つか、借入はどこまでか——これらは楽観的なシナリオだけで動いていると、考えが甘くなります。

子どもには、根拠のない「自分だけは大丈夫」という感覚を持たずに、冷静にリスクを考えてほしい。この法則は、その姿勢の入口だと感じました。

③ 「君は友だち5人の平均」の法則

「あなたは最もよく付き合う5人の平均になる」という考え方は、英語圏では長く語られてきたものです。橘玲さんはこれを子どもに伝わる形で整理しています。

会社員として20年以上働いていると、出会う人の傾向が似てきます。同じ会社、同じ業界、似た年収、似た生活スタイル。それ自体を否定するつもりはありませんが、気づけばそれが当たり前になっていました。

最近、少し変わりました。飲食業を経営している昔の友人、不動産投資をしている人、経営者、元銀行員、海外で仕事をしている人——そういった人と話す機会が増えて、自分が持っていなかった価値観や考え方に触れることが増えました。当たり前だと思っていたことが、一つの視点に過ぎなかったと気づく場面が増えた気がします。

ただ、子どもにこの法則を伝えるときに気をつけたいのは、「優秀な人と付き合え」という話にしないことです。

友達を損得で選ぶことを教えたいわけではありません。ただ、尊敬できる人、自分もこうなりたいと思える人と出会う経験をしてほしい、と思っています。そういう出会いが、自分の考えや可能性を広げてくれることがある。それだけです。

④ 「わたしはわたし」の法則

「自分の性格を変えようとするより、自分の性格でうまくいっている人のやり方を参考にする方がいい」——この考え方は、素直に「そうかもしれない」と思いました。

私は会社員としてマネジメントの仕事も経験しました。人を動かし、チームで成果を出すことが求められる役割です。それ自体は必要な仕事だと思って取り組んできました。でも、周囲でそれを得意そうにやっている人を見ていると、「自分は少し違うタイプかもしれない」と感じることがありました。

できることと、向いていることは別です。評価されることと、やっていて手応えを感じることも、必ずしも一致しません。

退職後の生活を考えるとき、この感覚が判断の基準の一つになっています。組織の中で上を目指すことより、自分に合った形で仕事をしていく方が、長く動ける気がしています。「わたしはわたし」——それは開き直りではなく、自分の出発点を正直に見るということだと思いました。

⑤ トライ・アンド・エラーの法則

不動産投資を始めた頃、最初から大きな物件を買ったわけではありません。まず小さな物件から始めました。

その中で、入居者対応、修繕の手配、管理会社との交渉、銀行融資の申し込み、税務、売却のタイミング——いろんな場面で失敗もありました。事前に考えていなかったトラブルもありました。でも、一つひとつが知識になっていきました。

失敗を完全に避けようとすれば、何もできません。逆に、一度の失敗で取り返しがつかなくなるような規模での賭けは避けるべきです。初心者の頃、業者の説明だけを信じて大きな借入を決めることには、実際のリスクがあります。「小さく失敗できる範囲で挑戦する」という考え方は、投資でも、日常の挑戦でも、使えると感じています。

子どもにも、同じ考え方を持ってほしいと思っています。新しいことを試して、うまくいかなければ修正して、また試す。失敗が怖くて動けないより、小さく動いて学ぶ経験をたくさんしてほしい。そうして、自分が好きなこと、得意なこと、やりたいことを見つけていってほしいと思っています。

⑥ 「世界は理不尽である」の法則

この法則は、扱い方が難しいテーマです。

著者が伝えているのは、人間は自分のネガティブな感情を、弱い立場の相手に向けやすい場合がある、という話です。これは心理学・行動科学の分野で議論されてきたテーマで、著者はその考え方を子どもに伝わるように整理しています。

この話を読んで最初に思ったのは、「これを知っているだけで、少し楽になれることがある」ということでした。

会社員として長く働いていると、理由が分からない怒られ方をする場面が出てきます。「自分が何かやらかしたのか」と考え込んでしまうことがありました。でも、相手の側に別の事情やストレスがあって、それが自分への態度に出ていることも、あったかもしれない。そう考えると、全部を自分のせいにして抱え込む必要はなくなります。

逆に、自分が誰かに強く当たりたくなったとき、「今自分はなぜこの人を責めたいのか」と一度立ち止まれることも大切です。自分のストレスを別の人にぶつけていないか、という問いです。

子どもには、理不尽な目に遭ったとき、それを全部自分の失敗だと思わなくていいことを知ってほしい。同時に、誰かへ当たりたくなったときに一歩引ける人になってほしい。難しい法則ですが、知っているかどうかで心の余裕が変わると感じています。

⑦ 「恵まれてないほうが人生は面白い」の法則

この法則を読んで、子育てについて改めて考えました。

子どもに何でも与えたいという気持ちは、親として自然なものだと思います。でも、何でも与えることが子どものためになるかどうかは、別の話です。

私が気にしているのは、「経験を奪わないこと」です。

生活の小さな場面でも、大人がやった方が早い場面はあります。時間がかかるし、仕上がりも不安定かもしれない。それでも、時間が許すなら自分でやらせてみる。うまくいけば自信になる。うまくいかなければ、どうすればよかったかを考える機会になる。

「自分にもできる」という感覚は、積み重ねでしか作れません。大人が先回りして全部解決してしまうと、その積み重ねの機会が減ります。

ただ、「苦労させれば成長する」とは思っていません。必要な安全と教育の環境は整えたい。ただ、その中で、ある程度の挑戦の余地を残しておきたいと思っています。子どもが自分で乗り越える経験を、できるだけ奪わないように、というのが今の考え方です。

📚 関連記事:本を読んで、実行した——それだけで人生が変わった話

子ども向けなのに、大人にも刺さる理由

この本を読んで、なぜここまで自分に引っかかるのか、と考えました。

大人は、年を重ねる中でいろいろな経験を積みます。そしてその経験が「常識」になっていく。「普通こうでしょ」「そういうものだから」という感覚が積み重なって、新しいことを単純に考えることが難しくなっていく気がします。

子ども向けの本には、余計なものが少ない。「これはこういうことだ」という説明が、シンプルな言葉でまとめられています。それを読むと、「分かっているつもりだったけれど、ちゃんと考えていなかったかもしれない」と気づく場面があります。

もう一つ、子どもへ説明する前提で読むと、自分の行動が問われます。「子どもにトライ・アンド・エラーを教えたい」と思いながら、自分はリスクを避けて動けていないことはないか。「友達は損得で選ぶな」と言いながら、自分の付き合いはどうか——本の言葉が、自分の行動を振り返る鏡になります。

親子で同じ本を読むと、同じ言葉について話すきっかけが自然にできます。それだけで、普段しない会話が生まれることがあります。

私が子どもに一番伝えたいこと

子どもに「お金持ちになってほしい」とだけ思っているわけではありません。

もちろんお金に困らない生活ができれば、選択肢が増えます。でも、それ以上に大切なことがあると感じています。それは、自分で考えて、自分で決められる大人になること、です。

みんなが行くから大学へ行く。大企業だから就職する。親が言うから従う——そういう選び方を否定するつもりはありません。ただ、「自分はどう生きたいのか」「何が大切なのか」を自分で考えてほしい。周囲の正解に乗り続けるより、自分なりの判断を積み重ねてほしいと思っています。

この本が良かったのは、「こうしなさい」という答えを押しつけていないことです。7つの法則も含めて、「こういう考え方がある、どう思う?」という問いかけのトーンです。子どもが自分で考えるための材料が、丁寧に用意されています。

答えを与える本ではなく、考えるきっかけをくれる本——それが、この本を読んで一番感じたことです。


親子で読むなら、こう使いたい

「読んでおきなさい」と渡して終わりにするのは、もったいない本だと感じます。

本は全部で8つのステージと特別ステージで構成されています。1ステージずつ読んで、その都度話をする使い方ができます。たとえば、「この考え方、学校で似たことあった?」「自分ならこのときどうする?」「お父さんが若い頃に同じようなことがあって、こうなったんだ」——そういう会話のきっかけに使える本です。

子どもに説明しようとすると、自分がどのくらい理解しているかが分かります。うまく説明できない部分は、自分でも腑に落ちていないということです。一緒に考えることが、親にとっても学びになります。

お金の話は、親子でもなかなか具体的に話しにくいテーマです。この本をきっかけに、「お金ってどうやって増えるの?」「友達って何で選ぶの?」「失敗したらどうする?」という会話が始まれば、それだけで十分だと思います。


この本が向いている人・向いていない人

✅ 向いている人❌ 期待と異なる可能性がある人
子どもへのお金の教育を始めたい親NISAや個別株の具体的な選び方を知りたい人
金融教育をどう始めれば良いか分からない人投資商品や銘柄の情報を求めている人
子どもに自分で考える力を身につけてほしい人お金の計算方法や節税の実践方法を求めている人
中学生〜高校生くらいの子ども自身すでに橘玲さんの著作を多数読んでいる方(概念自体は既知のケースが多い)
橘玲さんの本が難しいと感じていた人
お金だけでなく人生について親子で話したい人
橘玲さんの考え方を入門として知りたい大人

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他のお金の本との比較

本主な対象特徴読後に考えること
親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの?
橘玲(2024)
子ども・親子お金・人間関係・失敗など、人生を合理的に考えるための考え方をゲーム形式で学ぶ自分はどう考えて、どう生きるか
金持ち父さん 貧乏父さん
ロバート・キヨサキ(1997)
若者〜大人資産と負債の違い、お金を働かせる考え方の入門自分はどの象限にいるか、収入の作り方を変えるか
The Wealth Ladder
Nick Maggiulli(2025)
大人資産のステージ別に最適な戦略が変わるというフレームワーク。5種類の豊かさも扱う今の自分はどのステージにいて、何を優先すべきか
Die With Zero
Bill Perkins(2020)
大人お金を残すより使い切ることを考える。経験の価値と人生の時間を重視する何に時間とお金を使い、どう生き切るか

📚 関連記事:「ゼロで死ね」書評|Die With Zeroを読んで、お金の使い方を考え直した

📚 関連記事:『The Wealth Ladder』書評|資産が増えると選べる人生が変わった話


「人生で役に立つ7つの法則」と子どもに伝えたいこと

法則(書籍の正式名称)私が感じたこと子どもに伝えたいこと
100倍の法則自分の言葉が相手に「100倍」で届くことがある正しさより「どう伝わるか」を考える
「奇跡は起きない」の法則投資では「自分だけ大丈夫」を疑う習慣が大切成功より、失敗したときの備えを考える
「君は友だち5人の平均」の法則付き合う人が変わると、考え方も変わった尊敬できる人、好きでいられる人と出会う
「わたしはわたし」の法則「できること」と「向いていること」は別だと気づいた自分の性格でうまくやれる道を探す
トライ・アンド・エラーの法則小さく動いて失敗する経験が積み重なった小さな挑戦を繰り返し、好きなことを見つける
「世界は理不尽である」の法則理不尽を全部自分のせいにしなくていいと分かった一歩引いて、なぜそうなったかを考える
「恵まれてないほうが人生は面白い」の法則子どもの「経験の機会」を奪わないよう意識する自分でやって、できた、という感覚を積む

※ 法則名は書籍(筑摩書房刊)の正式な表現に基づいています。感想欄は筆者個人の解釈です。


まとめ

この本は、タイトルだけを見ると「どうすればお金持ちになれるのか」を子どもに教える本のように見えます。

でも、私が読んで一番感じたのは、お金の増やし方よりも「自分の人生をどう考えるか」を教えてくれる本だということでした。

私は子どもたちに、お金持ちになることだけを目指してほしいとは思っていません。自分で考え、失敗し、いろいろな人と出会い、自分が得意なことや好きなことを見つけてほしい。そして、周囲が決めた正解ではなく、自分なりの人生を選べる大人になってほしいと思っています。

この本には、そのために親子で話してみたいテーマがたくさんありました。最初は子どものために買った本でしたが、結果的には私自身が自分の仕事や投資、子育てを振り返るきっかけにもなりました。

お子さんにお金について学んでほしいと思っている方は、渡して終わりにするのではなく、一緒に読んで話をしてみるのも面白いと思います。

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お子さんへのお金の教育、どこから始めましたか?また、子どもと読んで良かった本があればぜひコメントで教えてください。

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さいかすたろう|45歳からの自由研究

20年以上会社員として働きながら、不動産投資と資産形成を続けてきました。現在は総資産3億円。退職後の自由な暮らしを目指して挑戦中です。同じ悩みを持つ方の参考になる情報を発信しています。

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