以前の記事(不動産投資の始め方|初心者が失敗しないための3つのアドバイス)で「物件数が増えるほどリスクは下がる」「時間を味方につける」という話をしましたが、今回はその考え方が一番わかりやすい形で実を結んだ事例を紹介します。2020年に購入した世田谷の再建築不可物件が、2年後の私道購入によって「再建築可」に変わり、資産価値が大きく上昇した実体験です。
【目次】
- 2020年、世田谷の再建築不可物件との出会い
- 再建築不可の理由:3つに分かれた私道
- 売主も交渉に失敗していた私道問題
- 個人投資家だからこそできる「待つ」という選択
- 指値交渉とL&Fアセットファイナンスでの購入
- 購入直後、隣家へ手紙を送る
- 2年後に訪れたチャンス:オープンハウスとの出会い
- 私道購入が資産価値に与えた影響
- 現在進行中のもう一つの私道交渉
- この経験から学んだこと
- まとめ
2020年、世田谷の再建築不可物件との出会い
2020年、世田谷で1棟のアパートを購入しました。価格は7,500万円、利回りは7.5%。1DK・24㎡が6戸入った、築30年超の物件です。当時の世田谷でこの利回りが出ている物件は、ほぼ例外なく何らかの「訳あり」要素を抱えています。今回のケースも、再建築不可という条件が利回りを押し上げている要因でした。
再建築不可の理由:3つに分かれた私道
この物件が再建築不可とされていた理由は、接道している道路が私道で、幅が2m未満だったことです。建築基準法上、原則として幅4m以上の道路に2m以上接道していなければ建物は建てられません。私道であっても、幅が2m未満であれば単独では再建築できないことになります。
さらにこの物件をややこしくしていたのは、接道している私道そのものが複数の区画に分かれ、別々の所有者が持っていたという点でした。
- 1区画は、隣に住む個人(隣家の住人)が所有
- もう1区画は、ある会社が所有。ただしこの会社が持つのはわずか13㎡ほどの私道部分のみで、隣接する土地は一切持っていない

真ん中の「ー2」が売買に含まれる私道。「ー18」が「ー19」の土地の所有している私道。「ー21」が会社所有の私道。
⚠️ 私道の権利関係は必ず確認する
再建築不可物件を検討する際は、「なぜ再建築不可なのか」だけでなく、接道している私道が誰の所有なのか、何区画に分かれているのかまで必ず確認しましょう。所有者が複数に分かれている場合、将来的に私道を買い増して接道条件を解消できる可能性がある一方、交渉相手が増えるぶん難易度も上がります。
売主も交渉に失敗していた私道問題
実はこの物件の売主(不動産会社)も、過去にこの私道問題の解消を試みていました。隣家の個人にも、私道のみを持つ会社にも、それぞれ買収の打診をしていたのです。しかし、結果はどちらも不成立でした。
隣家の住人は、当時は私道を売る意思がありませんでした。一方の会社は、すでに事業活動を停止しているような状態で、代表者にも連絡が取れず、交渉そのものが進められない状況でした。
売主はプロジェクト融資を使ってこの物件を取得していたため、私道問題の解決を長期で待つことができません。やむを得ず、リフォームを施した上でそのまま売却する方針に切り替え、それが今回私が購入した経緯につながっています。
個人投資家だからこそできる「待つ」という選択
売主が手放した一番の理由は「私道問題を解決するまで待てなかったこと」でした。逆に言えば、長期で待てる立場の買い手であれば、この物件には伸びしろがあると考えました。
📌 プロジェクト融資の不動産会社と個人投資家の違い
プロジェクト融資で物件を取得する不動産会社は、決められた期間内にリフォーム・販売まで完了させる必要があり、何年も交渉を待つという選択肢を取りづらい立場にあります。一方、個人で物件を保有する投資家は、家賃収入を得ながら何年でも交渉のタイミングを待つことができます。この「時間を味方につけられる」という点こそ、個人投資家の大きな強みです。
物件自体の質も悪くありませんでした。1DK・24㎡という間取りは単身者向けとして需要があり、6戸という規模も管理のしやすさを考えるとちょうど良いサイズです。築古ではあるものの、入居付けに大きな問題が出るとは考えませんでした。
指値交渉とL&Fアセットファイナンスでの購入
再建築不可という条件を踏まえ、価格については指値交渉を行いました。融資については、再建築不可物件にも対応できるL&Fアセットファイナンスを利用しました。L&Fアセットファイナンスは、物件評価を積算評価または収益還元評価のいずれか低い方で算出する一方、築古・地方・再建築不可・容積率オーバーといった難物件にも柔軟に対応できることで知られるノンバンク系の金融機関です。
指値交渉と難物件対応の融資という組み合わせにより、相場よりも有利な条件で取得することができました。
購入直後、隣家へ手紙を送る
購入してすぐ、私道を所有する隣家の住人に直接コンタクトを試みましたが、なかなか会うタイミングがつかめませんでした。そこで、「もし将来、私道部分を売ってもよいと思うことがあれば、ぜひご連絡ください」という趣旨の手紙を送ることにしました。
この時点では、すぐに反応があるとは考えていませんでした。ただ、こちらの意思を伝えておくこと自体に意味があると考え、種をまくつもりで手紙を出しました。
2年後に訪れたチャンス:オープンハウスとの出会い
そこから2年ほど経ったころ、別件で現地を訪れた際に、もう一つの私道(13㎡のみを所有していた会社の隣接地)で建物の解体工事が行われていることに気づきました。現場には不動産会社「オープンハウス」の看板が立っていました。
これは絶好の機会だと判断し、すぐにオープンハウスに連絡を取りました。事情を説明したところ、オープンハウス側はその私道部分に新たに建物を建てる予定はなく、私道のまま保有し続けるつもりであることがわかりました。こちらの「私道部分だけ譲ってほしい」という申し出に対しても、すんなりと合意を得ることができました。
私道購入が資産価値に与えた影響
私道の購入価格は、「私道だから」という理由での減額はなく、通常の土地と同じ単価での取引となりました。割高に感じる面もありましたが、私道を取得することで自分の所有地全体の価値が大きく上がることを考えれば、十分に妥当な投資だと判断しました。
支払い方法については、日本政策金融公庫での融資も検討しましたが、ちょうど別の物件を売却した資金が手元にあったため、最終的には現金で購入しました。
この私道を取得した結果、接道する私道の幅が2mを確保できる状態になり、単独での再建築が可能になりました。再建築不可から再建築可への転換は、土地評価そのものを大きく引き上げます。
| 時期 | このエリアの地価(㎡単価) |
|---|---|
| 2020年 | 85万1,666円/㎡ |
| 2025年 | 102万4,333円/㎡ |
このエリアの地価そのものも2020年から2025年で約20%上昇しています。これに加えて再建築可への転換という要素が乗っているため、購入当時と比べた資産価値の伸びは、単純な地価上昇率以上のものになっていると考えています。
現在進行中のもう一つの私道交渉
今回購入できたのは、私道3区画のうち、活動を停止していた会社が保有していた区画(オープンハウスが引き継いでいた部分)です。隣家の住人が所有するもう一つの私道区画については、現在も交渉が進行中です。こちらが成立すれば、さらに条件が良くなる可能性があります。進展があれば、別の記事として改めて紹介したいと思います。
この経験から学んだこと
- 私道の権利関係を読み解くことが、再建築不可物件の価値を見極める鍵になる:誰が、何区画を所有しているのかを正確に把握しておくことで、将来の打ち手が見えてくる
- 「待てる」という個人投資家の強みは、それ自体が武器になる:プロジェクト融資の不動産会社が手放した物件ほど、長期保有できる個人にとってはチャンスになりやすい
- 手紙やコンタクトの種まきは、すぐに結果が出なくても無駄にならない:2年前に送った手紙が直接の成果に結びついたわけではありませんが、つながりを作っておく姿勢自体が機会を呼び込む
- 現地に足を運ぶことで、思わぬチャンスに気づける:解体工事の看板に気づけたのも、定期的に現地を確認していたからこそ
- 難物件対応の金融機関を知っておくことが、選択肢を広げる:L&Fアセットファイナンスのような再建築不可物件にも対応できる金融機関の存在が、今回の取得を可能にした
まとめ
- 2020年、世田谷で再建築不可(私道幅2m未満)のアパートを7,500万円・利回り7.5%で購入
- 私道は3区画に分かれ、別々の所有者が保有。売主も買収を試みたが失敗していた
- 個人投資家として長期で待てる強みを生かし、指値交渉とL&Fアセットファイナンスの融資で購入
- 購入直後に隣家へ手紙を送り、2年後には解体工事を機にオープンハウスから私道を取得
- 私道幅2mを確保し再建築可へ転換。エリアの地価も2020年から2025年で約20%上昇
- 残るもう一つの私道区画の交渉は現在進行中
再建築不可物件は、リスクが高い一方で、私道の権利関係を丁寧に読み解き、時間をかけて交渉できる立場にあれば、大きく資産価値を伸ばせる可能性を持っています。同じような物件を検討している方の参考になれば幸いです。
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※本記事は筆者個人の体験に基づく内容です。私道の権利関係・接道条件・融資の可否は個別の物件・時期・金融機関の方針によって異なります。再建築不可物件の取得・私道交渉を検討する際は、必ず専門家(不動産会社・行政書士・金融機関等)にご確認ください。不動産投資にはリスクが伴い、本記事の内容を参考にした投資判断によって生じた損失について、筆者は責任を負いません。


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