【目次】
- はじめに:退職手続きを調べていたら、知らなかった仕組みに気づいた
- 【第1段階】そもそも退職金にはどんな税金がかかるのか
- 【第2段階】退職金の住民税には「1月1日ルール」がある
- 【第3段階】1月1日に海外にいた私の場合はどうなるのか
- 通常ケースと私のケースを比較する
- 私のケースの時系列
- 読者向けチェックポイント
- まとめ
- 参考にした公式情報
⚠️ この記事を読む前に
本記事は筆者自身のケースを調べた実体験の記録であり、税務アドバイスではありません。税制は改正される可能性があり、個人の居住状況・退職金・勤続年数・その他の所得等によって取り扱いが異なります。実際の申告については、税務署・居住自治体・税理士等にご確認ください。
はじめに:退職手続きを調べていたら、知らなかった仕組みに気づいた
2026年に会社を退職することを決めてから、退職金の手続きについて調べ始めました。退職金には所得税が課されることは知っていましたが、住民税についてはほとんど考えていませんでした。
ところが、自分の状況を整理しているうちに、少し特殊なことに気づきました。
私は2026年1月1日時点では海外に居住しています。その後、日本へ帰国し、2026年中に退職・退職金受領の予定です。
「1月1日に海外にいた場合、退職金の住民税は通常とは違う扱いになる」
これを知った時、最初に思ったのは「もしかして住民税がかからないの?」ということでした。
しかし調べてみると、そんな単純な話ではありませんでした。
税金に詳しいわけではない私が、退職手続きを進める中でどうやって理解したのかを、3段階に分けて書いていきます。退職所得の住民税について「なんとなく知っている」という方にも、もう少し整理したい方にも届けばと思います。
これ、かなり特殊なケースだと思います。海外赴任から帰国した年に退職する人でなければ、おそらく一生気づかないルールです。
【第1段階】そもそも退職金にはどんな税金がかかるのか
退職金には優遇された計算方法が用意されている
退職金は、長年会社に勤めた人への配慮から、通常の給与所得とは異なる、有利な計算方法で課税されます。
まず「退職所得」として課税対象の金額を計算します。計算式はこうです。
退職所得の金額 =(退職金の額 - 退職所得控除額)× 1/2
※一般退職手当等の場合。特定役員退職手当等・短期退職手当等は計算方法が異なります。
この計算で重要なのは2つのポイントです。
①退職所得控除——まず退職金から「退職所得控除額」を引きます。この控除額が大きいほど課税対象が減ります。
②1/2課税——控除後の残額をさらに半分にした金額に税金がかかります。
退職所得控除はどう計算するのか
国税庁(No.1420「退職金を受け取ったとき」)によると、退職所得控除額は勤続年数に応じて以下のように計算されます。
| 勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(A – 20年) |
※勤続期間に1年未満の端数がある場合は1年に切り上げます。
例えば勤続21年であれば:800万円 + 70万円 × 1年 = 870万円 が控除されます。
つまり、退職金が870万円以下であれば、退職所得の計算上、課税所得はゼロになります(所得税の場合)。
退職所得制度は、長年勤めた人ほど控除額が大きくなる仕組みです。これは給与所得とは異なる、有利な税制です。
所得税は会社が計算して天引きする
会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している一般的なケースでは、所得税と復興特別所得税は会社が計算して退職金支払い時に源泉徴収します。そのため、退職金だけを理由に確定申告する必要は原則ありません。
ただし今回の記事の中心は所得税ではなく、住民税です。この2つは仕組みが違います。
所得税と住民税は別の税です。所得税=国税(国へ)、住民税=地方税(都道府県・市区町村へ)。退職金に対する課税ルールも、所得税と住民税では異なる点があります。
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【第2段階】退職金の住民税には「1月1日ルール」がある
通常の住民税のしくみ
まず住民税の基本的な仕組みを確認します。
給与などの所得に対する住民税は、「前年の所得に対して、翌年度に課税される」のが一般的です。例えば2026年の給与所得に対する住民税は、2027年度(2027年6月頃から)に課税されます。
この場合の課税自治体は、翌年1月1日現在の住所地の市区町村です。
退職所得の住民税は「現年分離課税」という特別ルールがある
ところが退職所得については、通常の給与所得と仕組みが異なります。
退職所得に対する住民税は、原則として「現年分離課税」という方法で扱われます。「現年」とは今年のこと、「分離課税」は他の所得と切り離して課税するという意味です。
つまり退職金を受け取った年に、その年の1月1日の住所地の自治体が住民税を課税する——というのが通常のルールです。しかも会社が退職金を支払う際に住民税を天引き(特別徴収)するため、受け取り側は別途住民税を申告・納付する必要がありません。
| 比較 | 通常の給与所得 | 退職所得(通常ケース) |
|---|---|---|
| 住民税が課税される時期 | 翌年度(後払い) | 受け取った年(現年) |
| 課税自治体の決定基準 | 翌年1月1日の住所地 | 退職金受取年の1月1日の住所地 |
| 徴収方法 | 給与から毎月天引き(特別徴収) | 退職金支払い時に天引き(特別徴収) |
退職所得に対する住民税の税率は、原則として所得割で市町村民税6%・道府県民税4%、合計10%が基本です(東京都特別区等では特別区民税・都民税として課税)。税率の最新情報は居住自治体にご確認ください。
「1月1日ルール」——退職金を受け取る年の1月1日に国外居住だったら?
通常の退職では、退職金を受け取る年の1月1日に日本国内に住所があります。その場合は上述の通り、その住所地の自治体が現年分離課税で住民税を徴収します。
ところが、退職金を受け取る年の1月1日時点で国外居住だった場合、話が変わります。
その時点では、課税権を持つ市区町村が日本国内に存在しません。
つまり、通常の退職所得のように「退職金支払い時に住民税を天引きする現年分離課税」が行われない扱いになります。
ここまで読んで、思いませんでしたか?
「それなら、住民税がゼロになるの?」
私も最初はそう思いました。しかし調べてみると、そんなに都合のいい話ではありませんでした。
【第3段階】1月1日に海外にいた私の場合はどうなるのか
私のケースの時系列
2026年1月1日 海外居住
→ この時点で、日本国内に課税権を持つ市区町村がない
↓
2026年中 日本へ帰国
→ 退職
→ 退職金受領
→ 退職金支払い時の住民税の現年分離課税は行われない
↓
2027年1月1日 日本国内に住所あり
→ 住民税の課税対象の1月1日ルールに該当
↓
2027年2〜3月 確定申告・住民税申告(必要な場合)
↓
2027年6月頃〜 2027年度住民税として納付
住民税がなくなるわけではない
ここが最重要ポイントです。
私は2026年1月1日時点では海外居住のため、退職金を受け取る際に通常の現年分離課税(会社による特別徴収)は行われない見込みです。ここまでは「非課税になるかも?」と思わせる流れです。
しかし2027年1月1日には日本国内に住所がある予定です。
この場合、地方税の仕組み上、2026年に受け取った退職金を含む所得は、2027年度の住民税として課税対象になると考えられます。
つまり、「退職金に対する住民税が非課税になった」のではなく、「課税されるタイミングと課税の手続きが変わった」ということです。
「2028年に課税される」ではない
最初に私が誤解していたのは、「来年(2027年)の確定申告が終わって、さらにその次の年に住民税が来るのかな」という理解でした。しかしそうではありません。
流れは以下のとおりです。
- 2026年:退職金受領(この時点では現年分離課税による特別徴収なし)
- 2027年1月1日:住民税の課税地が確定(日本の居住自治体)
- 2027年2〜3月:2026年分の所得についての確定申告(必要な場合)・住民税申告
- 2027年6月頃〜:2027年度の住民税として納付
2028年になって初めて課税されるわけではありません。2027年の春〜夏にかけて、2026年分の所得(退職金を含む)に対する住民税として対応することになります。
住民税が翌年度課税になると「総合課税」になる
ここは重要な発見でした。
通常の退職所得に対する住民税は、他の所得と切り離して課税される「現年分離課税」です。
しかし私のように退職金を受け取る年の1月1日に国外居住だった場合、退職金支払い時の特別徴収が行われず、翌年度の住民税として申告・課税されます。この場合、退職所得は他の所得(給与所得・不動産所得など)と合わせて住民税申告で申告する形になります。
実際の計算方法(退職所得控除・1/2課税の適用有無)については、居住する自治体や税務署に個別に確認する必要があります。退職所得の有利な計算(控除・1/2)が住民税計算においても適用されるかどうかは、申告時に確認することを予定しています。
また、通常なら会社が行う特別徴収がないため、個人が申告する手続きが発生します。確定申告をするだけで自動的に住民税の処理が完結するかどうかも、居住自治体へ確認する予定です。
申告漏れに注意:住民税申告が別途必要な場合がある
自治体によっては、「退職金について会社から源泉徴収されていない場合、確定申告をしただけでは自治体側で住民税の対象として把握できないため、住民税申告が別途必要になる」と案内しているケースがあります。
「所得税の確定申告をしたから住民税について何もしなくていい、とは限らない」点は意識しておく必要があります。
実際に私が申告する際には、居住自治体の窓口または税務署に直接確認する予定です。
もし翌年1月1日(2027年1月1日)も海外にいたら?
自治体の公式案内では、翌年1月1日時点でも国外居住であれば、その翌年度の住民税は課税されないと説明しているケースがあります。
ただし、ここで一点はっきりしておきたいことがあります。
住民税の「住所」は住民票の有無だけで機械的に決まるものではなく、実際の生活の本拠など事実関係で判断される部分があります。「年末年始だけ海外にいれば住民税が免れる」という話ではありません。これは租税回避として問題になる可能性もあります。
私のケースでは2027年1月1日は日本国内の予定ですので、翌年1月1日海外という状況は発生しませんが、読者の中に異なる状況の方がいれば、税務署または税理士に相談することをお勧めします。
「1月1日に海外旅行していた」とは違う
念のため確認しておきます。この記事で話しているのは、税法・地方税法上で「国外居住者」として扱われる状況です。単に「年末年始をタイ旅行で過ごした」という状況とは全く異なります。
住民税の1月1日ルールにおける「国外居住」は、その時点で日本国内に住所を有していないこと——つまり実際の生活の本拠が海外にあることを意味します。短期の海外旅行や出張で1月1日を海外で過ごすことは、これに該当しません。
通常ケースと私のケースを比較する
| 項目 | 通常の退職(退職年1/1が国内) | 私のケース(退職年1/1が国外) |
|---|---|---|
| 退職年の1月1日 | 日本国内居住 | 海外居住 |
| 退職時の住民税の特別徴収 | 原則あり(会社が天引き) | 原則なし |
| 住民税の課税タイミング | 退職金受取年(現年) | 翌年度(翌年課税) |
| 他の所得との関係 | 原則として分離 | 他の所得と合わせて申告(詳細は自治体に確認) |
| 課税する自治体 | 退職年の1/1住所地 | 翌年の1/1住所地 |
| 住民税の申告手続き | 原則不要(会社が対応) | 別途申告が必要な場合あり(自治体に確認) |
| 住民税がゼロになるか | — | 翌年1/1も国外なら課税なしの可能性。翌年1/1が国内なら課税あり(私のケース) |
※上記の整理は概要です。個別の状況・自治体の取り扱いによって異なる場合があります。実際の申告は税務署・居住自治体へご確認ください。
私のケースの時系列(図)
| 時期 | 状況 | 住民税上の意味 |
|---|---|---|
| 2026年1月1日 | 海外居住 | 課税権を持つ国内市区町村がない |
| 2026年中 | 日本へ帰国 | — |
| 2026年中 | 退職・退職金受領 | 現年分離課税(会社による特別徴収)は行われない見込み |
| 2027年1月1日 | 日本国内に住所あり | 2027年度住民税の課税地が確定 |
| 2027年2〜3月 | 2026年分の確定申告・住民税申告(必要な手続き) | 退職所得を含めた2026年分の所得を申告 |
| 2027年6月頃〜 | 2027年度住民税として納付 | 2026年分の退職所得を含む住民税を納付 |
読者向けチェックポイント
海外赴任から帰国した年に退職を検討している方、または類似のケースの方向けに、確認すべきポイントをまとめます。
- ☐ 退職金を受け取る年の1月1日時点で、日本国内に住所があるか・ないか
- ☐ 1月1日に国外居住の場合、会社への事前確認をしているか(住民税の特別徴収が行われないことを把握しているか)
- ☐ 翌年1月1日の住所はどこか(翌年度の住民税が発生するかどうかに影響)
- ☐ 翌年の確定申告に退職所得を含める必要があるか、税務署に確認したか
- ☐ 確定申告とは別に住民税申告が必要かどうか、居住自治体へ確認したか
- ☐ iDeCo・企業型DCの老齢一時金も同年に受け取る場合、退職所得控除の重複調整ルールを確認したか
- ☐ 実際の申告時に、税理士や税務署への相談予約をしているか
iDeCo・企業型DCを同年に受け取る場合の注意
今回の記事の中心は住民税ですが、会社の退職金とiDeCo・企業型DCの老齢一時金(一時金受取)を同じ年に受け取る場合は、退職所得控除の重複調整ルールが適用されます。2026年以降、この重複調整期間に関するルールが改正されています(令和8年1月1日以後に支払いを受ける確定拠出年金の老齢一時金については9年以内の受取に適用)。詳細は別途記事にしたいと思いますが、該当する方は必ず確認してください。
→ 国税庁No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」に詳細が記載されています。
企業型DC 2,445万円の移換先、最終的にiDeCoに決めた理由——退職・法人設立という転機で考えたこと
まとめ
2026年1月1日に海外に住んでいた私の場合、2026年中に退職金を受け取っても、その場では通常の退職所得に対する住民税の現年分離課税(会社による特別徴収)は行われない見込みです。
ただし、2027年1月1日には日本に住んでいる予定なので、住民税そのものがなくなるわけではなく、2027年度に課税されることになります。
最初は少し得をする話なのかと思いましたが、調べてみると「非課税」ではなく「課税されるタイミングと手続きが変わる」という話でした。
退職しなければ、おそらく私は一生知らなかった制度です。海外赴任から帰国した年に退職する人はそれほど多くないかもしれませんが、同じ状況の人にはかなり重要なルールだと思います。
私自身、実際に2027年の確定申告・住民税申告をした際には、どのような手続きになったのか、このブログで改めて紹介したいと思います。
我が家の生活費35万円を全公開|内訳と固定費見直しポイント、退職後に必要な収入の目安
参考にした公式情報
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm - 国税庁 タックスアンサー No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm - 国税庁(国際税務・非居住者関連情報)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/index.htm - 総務省 地方税制度(住民税)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/(住民税概要)
※ 住民税の退職所得に関する詳細な取り扱いは、居住する市区町村によって案内が異なる場合があります。必ずお住まいの市区町村または税務署にご確認ください。
【免責事項】 本記事は筆者自身のケースを調べた記録であり、税務アドバイスではありません。税制は改正される可能性があり、個人の居住状況・退職金・勤続年数・その他の所得等によって取り扱いが異なります。実際の申告については、税務署・居住自治体・税理士等にご確認ください。
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