【目次】
- 友人と話していて、住宅ローンの話になった
- 住宅ローンで買った家は、原則として賃貸できない
- では、転勤ならなぜ認められることがあるのか
- 単身赴任の場合と、家族全員が転居する場合の違い
- 転職は「転勤」と同じではない
- 住宅ローンのまま賃貸できる可能性があるケースを整理する
- 住民票だけ残して賃貸するのは危険
- 賃貸併用住宅という選択肢
- 住宅ローン控除はどうなるのか
- 賃貸に出すと税務も変わる
- 銀行へ相談するときに確認すること
- 友人のケースをあらためて整理する
- まとめ
友人と話していて、住宅ローンの話になった
会社の友人と話していて、住宅ローンについて面白い話になりました。
その友人は、転職を予定しています。転職先の勤務地が今とは変わるため、いずれ引っ越す見込みです。
現在住んでいるのは、住宅ローンを使って購入したマンションです。「引っ越すとして、このマンションを売らずに賃貸に出せないか」と思い立ち、借入先の銀行に相談しに行ったそうです。
そこで銀行から提示されたのが、「住民票が対象マンションにあること」という条件でした。
友人は転出して第三者に貸したいわけですから、そのままでは難しそうです。
この話を聞いて、私は考え込みました。
私自身は投資用物件については投資用ローンを使っています。住宅ローンの性質上、そちらで賃貸経営することは最初から考えていません。ただ、普通の会社員が自宅用に住宅ローンを組んで、何らかの事情で住めなくなった場合はどうなるのか——転勤ならOKという話を聞いたことはあるが、実際にはどんな条件なのかをきちんと確認したことがありませんでした。
そこで、フラット35の公式FAQ・国税庁のタックスアンサーをもとに調べてみました。
この記事の注意点:住宅ローンの取扱いは金融機関・ローン商品・契約内容によって異なります。この記事は一般的な情報の整理を目的としており、個別の金融アドバイスではありません。実際の取扱いは借入先の金融機関に直接確認してください。
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1.住宅ローンで買った家は、原則として賃貸できない
まず基本から整理します。
住宅ローンは、本人または一定の親族が居住するための住宅を取得する資金として融資される商品です。投資用不動産ローンに比べて金利が低いのは、投資目的ではなく、債務者本人が居住することを前提にしているためです。
フラット35の公式情報では、以下のように明記されています。
「フラット35は、お申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる住宅の取得資金としてご利用いただいております。」
「第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金に利用するなどの目的外利用が判明した場合には、お借入れの全額を一括で返済いただく場合がありますのでご注意ください。」
出典:住宅金融支援機構(フラット35)公式FAQ「返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。」(Q&A番号3149)
つまり、最初から第三者に貸すことを目的として住宅ローンを使うことは、金融機関との契約に反する可能性があり、場合によっては残債の一括返済を求められるリスクがあります。
よく「住宅ローンで賃貸経営ができる」という情報を見かけることがありますが、これは誤りです。住宅ローンは自宅用の融資であり、投資用不動産の取得に使うことは原則として認められていません。
2.では、転勤ならなぜ認められることがあるのか
ただし、「原則NG」には例外があります。フラット35の公式FAQにはこう続きます。
「転勤等のやむを得ないご事情で、一時的に居住できない場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することは可能です。ただし、金融機関の窓口で住所変更に関する手続を行ってください。」
出典:住宅金融支援機構(フラット35)公式FAQ(Q&A番号3149)
これが「転勤なら賃貸できる場合がある」と言われる根拠です。
重要なのは3つの条件が組み合わさっている点です。
第一に「転勤等のやむを得ない事情」であること。購入時には予測できなかった外部要因による転居であることが求められます。第二に「一時的に居住できない」という状況であること。恒久的に住まないのではなく、あくまで一時的な不在とみなされることが重要です。第三に「融資住宅に戻ることを前提」としていること。将来的にその家に戻る意向があることが前提です。
さらに、金融機関への手続きが必要です。「転勤だから自動的に賃貸が許可される」ということではなく、取扱金融機関の窓口への届出・手続きを行うことが求められます。
なお、これはフラット35の場合の説明です。民間金融機関の住宅ローンについては、各行の契約約款・内部基準によって取扱いが異なります。同じ「転勤」でも、金融機関によって認められる条件や手続きは違います。
3.単身赴任の場合と、家族全員が転居する場合の違い
転勤に伴う転居には、大きく2つのパターンがあります。
パターンA:単身赴任で家族が引き続き住む場合
本人だけが転勤先へ転居し、配偶者や子どもなど家族が引き続きそのマンションに居住するケースです。この場合、住宅としての利用実態は継続しています。フラット35では、単身赴任等で家族が引き続き融資住宅に居住する場合は、住所変更届等の手続きで対応する案内があります。
このパターンは、「家族が住み続けている」という居住実態が残るため、家族全員が転居する場合より扱いやすいとされることが多いです。ただし、取扱金融機関への届出は必要です。
パターンB:家族全員が転居して第三者に貸す場合
本人も家族も全員転居し、空いた物件を第三者に貸し出すケースです。これが友人に近い状況です。
この場合、「自宅としての居住実態がなくなる」ため、住宅ローンの用途との整合性が問われます。転勤等のやむを得ない事情があり、将来戻る前提で、一時的な賃貸として金融機関が認める場合もあります。ただし条件は厳しくなり、金融機関への事前相談・承認が必須です。
| パターン | 居住実態 | 住宅ローン継続の可能性 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 単身赴任で家族が住み続ける | 残る | 比較的認められやすい | 住所変更届等の届出 |
| 家族全員転居・転勤(一時的) | なくなる | 金融機関の承認次第 | 事前相談・承認が必須 |
| 家族全員転居・第三者へ賃貸 | なくなる | 厳しい条件になる可能性 | 事前相談・承認が必須 |
4.転職は「転勤」と同じではない
ここが今回の友人のケースで特に重要な点です。
住宅ローンの賃貸許可が認められやすい代表的な事情として「転勤」が挙げられますが、それは多くの場合「会社の命令による転勤(転任の命令)」を指します。
これに対し、友人のケースは「自分の意思による転職に伴う転居」です。
国税庁のタックスアンサー(No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等)では、住宅ローン控除の再適用要件として「勤務先からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由」という表現が使われています。「転任の命令に準ずるやむを得ない事由」の範囲については、個別の状況によって判断が異なります。
住宅ローンの契約条件においても、金融機関が「やむを得ない事情」として何を認めるかは、各行の判断によります。転勤(会社命令)は多くの場合、やむを得ない事情として認められやすい。一方、自分の意思による転職は、個人の選択であるという側面もあり、金融機関によっては転勤と同等に扱われない可能性があります。
ただし、「転職なら絶対に認められない」と断言することもできません。転職理由、生活状況、将来の帰住予定など、総合的な事情を踏まえて金融機関が個別に判断するケースがあります。
重要なのは、「転職だから大丈夫」とも「転職だから絶対ダメ」とも決めつけず、必ず借入先の金融機関に直接確認することです。
5.住宅ローンのまま賃貸できる可能性があるケースを整理する
ここまでの情報をもとに、主なケースを一覧にします。
| ケース | 住宅ローン継続の可能性 | 主なポイント |
|---|---|---|
| 単身赴任で家族が残る | 比較的高い | 居住実態が残る。届出が必要 |
| 会社命令による転勤(家族全員転居・一時的) | 銀行承認次第 | 一時的転居、帰住前提。事前相談必須 |
| 海外赴任(会社命令) | 銀行承認次第 | 帰国予定・期間が重要。事前相談必須 |
| 長期療養・入院 | 銀行承認次第 | やむを得ない事情として認められる場合がある |
| 親の介護で一時的に転居 | 銀行承認次第 | 一時的転居として扱われるかは要確認 |
| 転職による転居(自己都合) | 厳しくなる可能性 | 会社命令の転勤と同等に扱われない場合がある |
| 自分の都合での住み替え(賃貸化目的) | 厳しい | 投資目的と判断されやすい |
| 最初から第三者へ賃貸目的 | 原則不可 | 投資用ローンが必要 |
| 住民票だけ残して実際は居住せず賃貸 | 不可と考えるべき | 契約違反リスク。一括返済を求められる可能性 |
| 建物の一部のみ賃貸(賃貸併用住宅) | 条件次第で可能 | 住宅部分1/2以上等の条件あり(フラット35) |
繰り返しになりますが、この表はあくまで一般的な傾向の整理です。個別のケースの可否は、金融機関・ローン商品・契約内容・事情の詳細によって異なります。
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6.住民票だけ残して賃貸するのは危険
友人の話を聞いて、「住民票をそのまま残しておけばよいのでは?」と思った方もいるかもしれません。実際、そういう情報をネットで見かけることもあります。これについてはっきりお伝えしたいと思います。
住民票を移さないまま別の場所に実際に住み、第三者に賃貸することは、住宅ローンの目的外利用に該当するリスクがあります。
住宅ローンにおいて問われるのは、実際に居住しているかどうかです。住民票の所在地と実際の居住場所が一致していないことは、住民基本台帳法上の問題にもなりえます。
フラット35では、融資対象物件に実際に居住しているかを確認するために、郵便等による調査を行う場合があります。居住実態がないことが判明した場合、目的外利用として扱われ、一括返済を求められる可能性があります。
「住民票を残しておけば銀行にはわからない」という考え方はリスクが高く、勧めることができません。
もし賃貸に出したいなら、正面から銀行に相談する。それが唯一の正しい入口です。
7.賃貸併用住宅という選択肢
住宅ローンを活用しながら一部を賃貸に出す方法として、最初から設計段階で考える選択肢が賃貸併用住宅です。
賃貸併用住宅とは、自宅部分と賃貸部分が同じ建物に共存する住宅です。たとえば1階を賃貸、2階を自宅にするといった形です。
フラット35の技術基準における条件
フラット35の技術基準では、併用住宅について「住宅部分の床面積が全体の2分の1以上」であることが必要とされています(出典:フラット35 対象となる住宅・技術基準)。
つまり、建物全体のうち半分以上が自宅部分でなければなりません。賃貸部分の方が広い設計では、フラット35の対象にならない場合があります。
また、以下の点も確認が必要です。金融機関によって自宅部分の割合の要件・賃貸部分の扱いが異なります。アパートローンとの組合せになる場合もあります。家賃収入の評価方法・ローン審査への影響も金融機関ごとに違います。
| 賃貸併用住宅のメリット・デメリット | |
|---|---|
| メリット | デメリット・注意点 |
| ・住宅ローンの低金利を活用できる場合がある ・家賃収入をローン返済に充てられる ・自宅を持ちながら賃貸経営ができる ・将来的に全住宅・全賃貸などへ転用できる可能性 | ・自分も同じ建物に住む(距離が近い) ・空室リスクがある ・建築費が割高になりやすい ・間取り・設計に制約がある ・売却しにくくなる場合がある ・自宅部分と賃貸部分の税務処理が必要 ・建物全体を貸す目的では使えない |
賃貸併用住宅を住宅ローンで建てる場合、「自宅部分に本人が居住すること」は大前提です。「住宅ローンを使って収益物件を建てる手段」として利用することはできません。
8.住宅ローン控除はどうなるのか
住宅ローンを継続できたとしても、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)が継続できるとは限りません。
国税庁のタックスアンサー(No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等)によると、取扱いは以下のように整理されます。
単身赴任等で家族が引き続き住む場合:家屋の所有者が転勤等のやむを得ない事情により、家族と日常の起居を共にしない場合において、家族が入居し、引き続き居住しており、事情が解消した後は共に居住することが認められるときは、その所有者が居住しているものとして取り扱われ、住宅ローン控除の適用を受けることができます。
家族全員が転居して一時的に住まなくなった場合(転勤等):住めなくなった年以降、住宅ローン控除の適用はいったん停止します。ただし、以下の要件を満たす場合、再び居住した年(その年に賃貸に供していた場合は翌年)以後、残存控除期間について再適用を受けることができます。
再適用の要件は、「勤務先からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由があること」と「居住の用に供しなくなる日までに、一定の手続を行っていること」です。手続きの内容は国税庁の公式情報をご確認ください。
注意:住宅ローン控除の控除期間は、再居住しても延長されません。再適用を受けられるのは残存控除期間がある場合に限られます。賃貸に出していた期間の控除は受けられません。詳細は国税庁のタックスアンサーNo.1234または最寄りの税務署にご確認ください。
9.賃貸に出すと税務も変わる
住宅を賃貸に出すと、税務上の扱いが変わります。ここでは最低限の基本だけ整理します。
家賃収入は不動産所得として確定申告が必要になります。不動産所得の計算では、家賃収入からさまざまな費用を差し引くことができます。経費として認められるものの例として、管理委託費、固定資産税・都市計画税、火災保険料、建物の減価償却費、ローン利息部分(元本返済は経費不可)、修繕費、管理費などがあります。
注意が必要なのは、ローンの元本返済は経費になりません。よく混同されますが、経費にできるのは支払利息部分のみです。
また、マイホームの売却に関する3,000万円特別控除など、自宅としての税制上の特典は、賃貸に出している間は適用が難しくなる場合があります。
税務の詳細はこの記事の中心ではありません。実際に賃貸に出す場合は、税理士にご相談されることをお勧めします。
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10.銀行へ相談するときに確認すること
住宅ローンで購入した物件の賃貸を検討する場合、まず借入先の金融機関に相談することが必要です。その際に確認しておくべき事項をまとめます。
| No. | 確認事項 |
|---|---|
| 1 | 第三者への賃貸は認められるか |
| 2 | 一時的な転居として扱われるか(転勤・転職・介護など理由ごとに) |
| 3 | 認められる場合、最長何年まで対応可能か |
| 4 | 転勤辞令など証明書類の提出が必要か |
| 5 | 転職による転居の場合はどう扱われるか |
| 6 | 海外赴任の場合の特別な条件はあるか |
| 7 | 家族が残る場合と全員転居する場合で取扱いが違うか |
| 8 | 住宅ローンの金利条件は変わるか |
| 9 | 投資用ローンへの切替えが必要になるか |
| 10 | 住宅ローン控除への影響はどうなるか(税務は税理士にも確認) |
| 11 | 火災保険の契約内容変更が必要か(居住用→賃貸用) |
| 12 | 保証会社への届出は必要か |
| 13 | 賃貸管理会社に委託してよいか |
| 14 | 将来、自宅に戻る予定がある場合の説明・証明の方法 |
| 15 | 認められない場合、どのような選択肢があるか(売却・借換えの可能性) |
11.友人のケースをあらためて整理する
今回の友人の状況を整理します。
- 住宅ローンでマンションを購入し、現在は本人が居住
- 転職予定。それに伴って別の場所へ引っ越す予定
- マンションを売らずに賃貸に出したい
- 銀行に相談したところ、「住民票が対象マンションにあること」という条件を提示された
銀行が提示した条件は、その銀行・その住宅ローン契約における個別の回答です。「住民票がそこにあること」を前提にしているということは、本人の実際の居住を確認手段としている可能性があります。
ここで「だったら住民票だけ残せばいい」とは、私は思いません。実際に住んでいないのに住民票だけ残すことは、居住実態と戸籍上の住所が乖離した状態であり、住宅ローンの用途条件と矛盾する可能性があります。
友人が取りうる現実的な選択肢は、大きく以下のようになります。
まず、銀行にもう一度正式に「転居後に第三者へ賃貸することは認められるか」を明確に確認することです。転職という事情がどう評価されるかも含めて、具体的な条件を聞くべきです。
もし銀行が認めないという答えであれば、取りうる方向性として売却があります。住宅ローン残債と売却価格のバランスを確認したうえで検討します。次に投資用ローンへの借換えがあります。金融機関・審査条件・金利の変化など、実現可能性をまず確認する必要があります。それが難しければ、賃貸を諦めて空き家にする、または売却するという選択もあります。
いずれも保証できる選択肢ではありません。大切なのは、正面から銀行に確認し、認められないのであれば次の現実的な選択肢を探ることです。
まとめ
今回の記事で伝えたかったことを一言でまとめると、「住宅ローンで買った家を賃貸に出せるかどうかは、二択で決まるものではない」ということです。
鍵を握るのは、なぜ住めなくなったのか、一時的なのか恒久的なのか、将来戻る予定があるのか、家族が残るのか、そして金融機関が承認するかどうかです。
フラット35の公式情報では、転勤等のやむを得ない事情で一時的に住めなくなった場合に、融資住宅に戻ることを前提とした賃貸は可能としています。一方で、最初から投資目的で住宅ローンを使うことや、目的外利用が判明した場合の一括返済リスクについても明記されています。
住宅ローンは低金利であることに価値があり、それは「自宅に住む」という条件があってこそです。その前提を外れた利用は、金融機関との契約に反する行為になる可能性があります。
もし今の家に住めなくなる事情ができたなら、取る行動は一つです。
勝手に貸さず、まず借入先の銀行に相談する。
それが正しい最初の一歩です。
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免責事項
この記事は一般的な情報の整理を目的としており、個別の金融・税務アドバイスではありません。住宅ローンの取扱いは金融機関・商品・契約内容により異なります。実際のご判断にあたっては、必ず借入先の金融機関、および税理士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の公開情報に基づいています。


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