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📖 書誌情報
書名:The Wealth Ladder: Proven Strategies for Every Step of Your Financial Life
著者:Nick Maggiulli
出版社:Portfolio(Penguin Random House)
発売日:2025年7月22日
ページ数:256ページ(ニューヨーク・タイムズ ベストセラー)
Nick Maggiulliの前作『Just Keep Buying』を読んだのは、数年前のことです。
投資や貯蓄について「感情ではなくデータで考える」という著者のスタンスが好きでした。「市場が下がっても買い続ける」「タイミングを読もうとするより、継続を選ぶ」——シンプルだけど根拠のある話が多く、読み終えてしばらく手元に置いておいた数少ない本のひとつです。
その著者が次の本を出した、という話を知り、迷わず購入しました。それが『The Wealth Ladder』です。
前作との違いはすぐに気づきました。『Just Keep Buying』は「どうやって資産を積み上げるか」という話でした。でも今回は、「資産が増えると、お金との付き合い方がどう変わるのか」という話になっている。もう少し言うなら、「どのくらいの資産があると、どんな選択ができるようになるか」を、ステージごとに整理している本です。
45歳、会社員。不動産と株式で資産形成を続けてきた今の自分には、そのテーマがタイムリーに刺さりました。
【目次】
- 『The Wealth Ladder』はどんな本か
- 0.01%ルールが自分の変化と重なった
- お金が増えると「選択肢」が増える
- 一番刺さったのは「5つの富」という考え方
- 「誰と時間を過ごすか」を選べるということ
- 経済的な富は、ほかの豊かさを守る土台
- ただし、お金を増やし続ければいいわけではない
- 『Die With Zero』と重なった視点
- 今の自分だから刺さった本だった
- この本が向いている人・向いていない人
- 3冊の比較表
- この本から持ち帰った5つの考え
『The Wealth Ladder』はどんな本か
本書の核にある考えは、「資産の金額によって、最適な戦略は変わる」というものです。著者はこれを6つのレベルに分類しています。おおまかに言うと、資産がほとんどない状態から始まり、数千万、数億、そして数十億円以上へと段階が上がるにつれて、何に集中すべきか、支出をどう考えるか、投資をどう扱うかが根本から変わってくる、という整理です。
資産レベルが低い段階では、まず収入を増やすこと、無駄な支出を削ること、そして投資をとにかく始めることが優先されます。レベルが上がるにつれ、投資の重要度が高まり、ある段階からは「働かなくても資産が増える状態を作ること」へ焦点がシフトしていきます。そしてある一定以上の段階では、投資よりも時間の使い方や人との関係、経験にお金を使うことの方が人生の満足度につながる、という話になっていく。
「全員に同じアドバイスをするのは無意味だ」というのが著者の立場です。20代で資産ゼロから始めた人と、資産が数千万円になった40代では、最適な判断は違う。それを丁寧に整理しているのが本書の構造です。
私がこの本を読んで改めて気づいたのは、「自分は今どのステージにいて、何を優先すべきなのか」を考えたことがなかった、ということです。資産は増えてきた。でも、判断の基準はずっと「増やすこと」だけだった。この本は、そこに問いを立ててくれます。
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0.01%ルールが自分の変化と重なった
本書の中で紹介される「0.01%ルール」という考え方があります。自分の総資産の0.01%(1万分の1)以下の支出については、深く悩んだり大きなエネルギーを使ったりしなくていい、というものです。
具体的に考えてみると、わかりやすくなります。資産が1,000万円ならその0.01%は1,000円。3,000万円なら3,000円。1億円なら1万円です。その金額以下の出費について、あれこれ比較検討に時間を使うことは、精神的なコストに見合っていない、という話です。
これを読んで、自分のかつての行動を思い出しました。
学生時代は、スーパーで10円でも安いものを選んでいました。コンビニのジュースは「高い」と思っていた。社会人になっても、外食の値段は常に気になっていました。500円のランチと800円のランチのどちらにするか、意外と考えていた気がします。
今は、そこまで悩まなくなりました。300円の差で食事を選ぶことは、ほとんどありません。ただ、これを「お金に余裕ができたから気にしなくなった」という意味で書きたいわけではありません。
重要なのは、価格差より時間や満足度を重視できる場面が増えたという変化です。「300円を節約するために10分歩く」という選択を、以前は自然にしていました。今はその10分を別のことに使う方が、自分にとって意味があると感じています。これは価値観の変化であり、資産と時間の関係が変わった、ということでもあります。
0.01%ルールは、お金を気にしない贅沢の話ではありません。資産が増えると、小さな金額差にかけるエネルギーよりも、別のことに使うエネルギーの方が価値を持ち始める——その変化を言語化してくれた考え方として、私には刺さりました。
お金が増えると「選択肢」が増える
経済的な豊かさを「たくさんのものを買える状態」だと思っていた時期がありました。高い車に乗れる、広い家に住める、高級レストランへ行ける——そういうイメージです。
でも、自分の感覚は少し変わっています。今、資産形成を続けてきた先で感じる豊かさは、「選択肢が増えること」に近い気がします。
たとえば、こういうことです。安い店を探すために時間を使わなくていい。移動をどの手段にするか、費用よりも時間で選べる場面が増えた。予定を組むとき、コストを最優先にしなくてよくなった。そして、「この仕事はやめていいか」という問いを、現実的なものとして考えられるようになった。
最後の「仕事をやめる選択肢を持てる」というのは、私にとってはかなり大きい変化です。会社員として働いていると、どれだけ違和感があっても、辞める選択肢が現実的でなければその感情は行き場がない。でも、一定の資産があることで「やめることができる」という状態は、気持ちの余裕に直接つながります。実際に辞めているかどうかに関係なく。
物を増やすことに興味が薄れてきた一方で、時間や選択の自由に対しての価値を強く感じるようになったのは、資産形成を続けてきた中での自然な変化かもしれない。この本を読みながら、そんなことを考えていました。
📚 関連記事:私がFIREを目指すことにした理由——45歳、会社員、タイ赴任から退職準備まで
一番刺さったのは「5つの富」という考え方
この本で私が最も印象に残ったのは、資産を増やすための個別の戦略よりも、「富には5つの種類がある」という整理でした。
本書では、富を次の5つに分類しています。
| 富の種類 | 概要 |
|---|---|
| ① 金融的な富 | 資産・収入・投資。数字で表せる経済的な豊かさ |
| ② 社会的な富 | 人間関係・信頼・コミュニティ。誰と過ごすかという豊かさ |
| ③ 精神的な富 | 知識・好奇心・意味や目的の感覚。内面の豊かさ |
| ④ 身体的な富 | 健康・体力・エネルギー。行動できる身体の豊かさ |
| ⑤ 時間的な富 | 自由に使える時間の量と質。時間の豊かさ |
※ 本書の分類をもとに筆者がまとめたものです。
著者は、金融的な富は他の4つの富を引き上げる「乗数」のようなものだと表現しています。お金は、すでに持っているものを増幅させる力を持つ。でも、増幅する素材がなければ、お金があっても豊かになれない。
私はこの整理が腑に落ちました。
お金があっても、健康を損なっていたら、その豊かさは半減します。友人も家族も疎遠になっていれば、お金を使って行く場所がない。時間がなければ、そもそも何もできない。お金はそれ単体では完結しない、ということを、著者はシンプルに示しています。
塩の比喩が本書に登場します——塩は料理の味を引き立てるが、塩だけを食べてもおいしくない、という意味合いです。金融的な富も同じで、それが活きるかどうかは、他の富の状態に依存している。これを読んで、「では今の自分は、どの富を大切にできているか」と自然に考えていました。
「誰と時間を過ごすか」を選べるということ
5つの富の中で、私が一番考えさせられたのは「社会的な富」でした。
会社員として20年以上働いてきて、気づいたことがあります。仕事では、自分が選べない人間関係が常にあります。苦手な上司、価値観が合わない同僚、一緒にいると疲れるクライアント——そういった人とも、仕事だからという理由で接し続ける。「嫌だから断る」という選択は、会社員では原則として使えません。
それ自体を否定したいわけではありません。様々な人と働く経験は、確かに自分を鍛えてもくれた。でも、45歳になって振り返ると、その全てが自分にとって必要だったかどうかは、正直わかりません。
私がこの本を読んで改めて感じたのは、「誰と時間を過ごすかを、ある程度自分で決められる状態」が、社会的な豊かさの核心だということです。
経済的な自由が増えると、人間関係の選択肢が広がる場合があります。仕事を選べる、断れる、距離を置ける。大人として必要な関係は維持しながら、自分の時間配分を主体的に決められる——その選択肢を持てるかどうかは、金融的な富と深くつながっています。
私にとって経済的な自由の価値は、高級品を買うことよりも、誰と時間を過ごすかを自分で決められることにある。この本を読んで、その感覚がより明確になりました。
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経済的な富は、ほかの豊かさを守る土台
ここまで書いてきて、「経済的な富よりも人間関係が大事」という話に聞こえているかもしれません。でも、私はそうは思っていません。
金融的な富がある程度あることで、他の富を守りやすくなる場面は確かにあります。
健康の面では、費用を気にせず医療にアクセスできる。定期検診を受ける、体に合った食事を選ぶ、運動の時間を確保する——こういった選択も、経済的な余裕があることで取りやすくなります。時間の面では、時間を買える場面が増えます。家事の一部をアウトソースする、移動手段を変える、必要なら仕事量を調整する——これらは、ある程度の資産があってはじめて現実的になります。
学びなおしや、やりたいことへの挑戦も同じです。仕事を離れて勉強する時間を作る、新しいことを試す、旅行や経験にお金を使う——これらは、生活の心配がある状態では難しい選択です。
だから私は、金融的な富を否定していません。むしろ、それが他の4つの豊かさを支える土台だと思っています。土台がなければ、その上に積み上げるものが不安定になる。経済的な自由は、それ単体では意味が薄いかもしれない。でも、それがあることで、他の豊かさを選びやすくなる。
ただし、お金を増やし続ければいいわけではない
ここでバランスを取っておきたいことがあります。
経済的な富を追い続けると、他の富を失う可能性があります。仕事時間が増えれば、身体的な富が削られる。健康に気を配る時間がなくなる。家族や友人と過ごす時間が減れば、社会的な富が薄れていく。資産額だけが自分の評価軸になり始めると、精神的な余裕が失われることもある。
私自身、資産形成を続けてきた20年間を振り返ると、「もっと積み上げなければ」という感覚で動いていた時期がありました。目標があることは悪くない。でも、何のために積み上げているのかという問いが抜け落ちると、いつの間にか積み上げること自体が目的になっている、ということが起きます。
この本を読んで、自分の中でひとつ意識が変わりました。「もっと増やす」だけを考えるステージは、そろそろ終わりにしてもいい。これからは、「どう使うか、何をするか、誰と過ごすか」へ、軸を移していきたいと思っています。
資産形成は手段であって、ゴールではない。当たり前のことのように聞こえますが、実際に動いている人間が腹から納得するのは、もう少し時間がかかることだと感じています。
『Die With Zero』と重なった視点
この本を読みながら、以前読んだ『Die With Zero』が何度か頭に浮かびました。
2冊は、目的の違う本です。『The Wealth Ladder』は「どうやって資産のステージを上がるか」という話。『Die With Zero』は「人生の時間とお金をどう使い切るか」という話です。テーマは別のところにあります。
ただ、私の中ではつながりました。
『Die With Zero』で印象に残っているのは、「やりたいことには適したタイミングがある」という考え方です。体が動く年齢でしかできないことがある。人生には使える時間に限りがあり、お金をためるだけために時間を費やしていると、使うべき時期を逃す可能性がある。
『The Wealth Ladder』は資産を増やすことの意味を問い直し、『Die With Zero』はためたものをどう使うかを問います。どちらも、「お金を増やすこと自体がゴールではない」という方向性で私には重なっています。資産形成をある程度続けてきた今の段階で、この2冊を続けて読んだことは、タイミングとしてよかったと感じています。
📚 関連記事:「ゼロで死ね」書評|Die With Zeroを読んで、お金の使い方を考え直した
今の自分だから刺さった本だった
もし大学生のときにこの本を読んでいたら、印象に残る部分は違ったと思います。
当時の自分には、「まず資産を作れ」「収入を増やせ」という話が響いたはずです。0.01%ルールは遠い話だったでしょうし、「社会的な富」より「金融的な富をどう作るか」の方が気になったはず。それは当然のことで、ステージが違えば、必要な情報も違います。
今の自分には、「5つの富のバランス」「お金以外の豊かさ」「使い方と生き方」という部分が強く響きました。資産形成をある程度続けてきて、退職を考えるようになった今だから、「次は何のためにどう動くか」という問いが自然に出てくるからだと思います。
この本は、資産のステージによって読み方が変わる本だと感じました。若いうちに読めば「どう積み上げるか」が刺さる。中盤以降に読めば「どう選ぶか」が刺さる。同じ本でも、読む人の状況によってまるで別の本のように感じる。そういう本は、多くありません。
読んで良かった、と素直に思いました。
3冊の比較表
| 本 | 主なテーマ | 読後に考えること | 向いている読者 |
|---|---|---|---|
| The Wealth Ladder Nick Maggiulli(2025) | 資産ステージ別の戦略と、5つの富という豊かさの定義 | 今の資産レベルで何を優先すべきか | 資産形成を続けている人、FIREを考えている人 |
| Just Keep Buying Nick Maggiulli(2022) | データに基づく貯蓄・投資の実践原則 | どう積み上げ続けるか | 投資初心者〜中級者、感情に流されず続けたい人 |
| Die With Zero Bill Perkins(2020) | 人生の時間とお金を使い切るという考え方 | 何に時間とお金を使うべきか | FIRE・人生設計を考えている人、使い方に迷っている人 |
※ 各書籍の情報は2025年8月時点の公式情報に基づきます。
この本が向いている人・向いていない人
| ✅ 向いている人 | ❌ 向いていない人(期待とずれる可能性) |
|---|---|
| 資産形成をある程度続けてきて、次の戦略に迷っている人 | 具体的な個別株の推奨を求めている人 |
| FIREを考えている人 | 短期売買のテクニックだけを知りたい人 |
| お金の増やし方だけでなく使い方も考えたい人 | 日本の税制・NISAの具体的な活用法を求めている人(本書は米国を主な対象にした書籍です) |
| お金と豊かさの関係を整理したい人 | すでに十分な知識があり、新しいデータを求めている上級者 |
| 『Just Keep Buying』を読んで次を探している人 | 「豊かさ論」に興味がなく、数字だけ知りたい人 |
| 『Die With Zero』に共感した人 | |
| 資産形成を始めたばかりで、全体像を把握したい人 |
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この本から持ち帰った5つの考え
- 経済的な富は目的ではなく、選択肢を増やすための手段だ
- 資産のステージが変わると、最適な戦略も変わる。ずっと同じ判断基準でいなくていい
- 0.01%ルール——小さな金額差に費やすエネルギーより、時間や満足度を重視できる場面が増えた
- 豊かさは5種類ある。金融的な富は、他の4つを引き上げる「乗数」だという整理が腑に落ちた
- 「誰と時間を過ごすか」を自分で選べる状態が、社会的な豊かさの核心のひとつだと改めて感じた
まとめ
『The Wealth Ladder』は、「お金持ちになる方法」の本ではありません。「資産のステージごとに、何を優先すべきかが変わる」という話であり、その先に「豊かさとは何か」という問いが置かれている本です。
著者のNick Maggiulliは、前作『Just Keep Buying』で「データに基づいた資産形成」を書いていました。今回はそこから一歩進んで、「積み上げた資産をどう考えるか、どう使うか」という方向に踏み込んでいる。その変化が、私には興味深かったです。
45歳で退職を考えている今、お金の話を「増やすだけ」で終わらせたくない、という気持ちが強くなっています。時間をどう使うか、誰と過ごすか、健康をどう保つか——そういったことへ意識を移していくタイミングとして、この本は良いきっかけになりました。
読んで「儲かりそう」と思う本ではありません。ただ、読み終えた後に、「自分にとっての豊かさって何だろう」と静かに考えたくなる本です。
📚 関連記事:本を読んで、実行した——それだけで人生が変わった話
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あなたにとって「豊かさ」はどのような状態ですか?資産が増えることで、何が変わりましたか?ぜひコメントで教えてください。


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