元銀行員に決算書を見てもらって分かった——銀行が不動産融資で本当に見ていること

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先日、知人から一人の方を紹介してもらいました。

銀行で長く管理職・支店長クラスを経験し、融資審査の現場にいた方です。現在は銀行をすでに退職されていて、その後も別の形で仕事を続けているとのことでした。

知人からは、「今後の不動産融資の進め方について参考になると思うし、早期退職した先輩として話を聞いてみたらどうか」と紹介してもらいました。

融資の話を聞くつもりで会いに行きました。ただ、振り返ってみると、一番記憶に残ったのは融資の話ではなかったかもしれません。

【目次】

  1. 確定申告書と決算書を事前に渡した
  2. 一番印象に残ったのは「銀行はとにかくリスクを嫌う」ということ
  3. ノンバンク借入をどう見るのか
  4. 銀行への借り換えという選択肢
  5. 繰り上げ返済も選択肢のひとつ
  6. 債務償還年数は20年程度が一つの目線
  7. 健美家のコラムとも重なった
  8. 退職後、借り換えを検討したい
  9. 実は、その方自身も早期退職者だった
  10. レールを降りても、人生は続く
  11. 新しい出会いが、自分の世界を広げてくれる

確定申告書と決算書を事前に渡した

面談の前に、個人の確定申告書3期分と法人の決算書を事前に渡しました。

自分自身は毎年数字を確認しています。収支がどうか、法人の利益がどう動いているか——手元の数字は把握しているつもりでした。ただ、それはあくまで自分の視点での読み方です。

銀行の側からこの数字を見るとどう映るのか。そこが、今回最も聞きたかったことでした。

融資を受ける側は、「この物件は利回りが○%ある」「キャッシュフローが出ている」という視点で物件や財務を見ます。でも、融資を出す側の人間は同じ資料から何を読み取るのか。その視点の差を教えてもらえる機会は、通常の融資相談ではなかなか得られません。だから、今回のような事前に資料を渡して見てもらえるという機会を、正直ありがたいと思っていました。

一番印象に残ったのは「銀行はとにかくリスクを嫌う」ということ

面談全体を通じて最も印象に残ったのは、銀行という組織の基本的な姿勢でした。一言で表すなら、「リスクを徹底的に減らそうとする」ということです。

不動産投資家として物件を見るとき、利回りが高いか、キャッシュフローが出るか、将来的な値上がりが期待できるか——そういう視点が中心になります。「儲かりそうかどうか」です。

一方、銀行が考えていることは本質的に違います。

銀行は融資で得られる収益が利息に限定されます。貸した1億円が10億円になることはありません。どれだけ物件が値上がりしても、どれだけ家賃収入が増えても、銀行の取り分は利息のみです。一方で、貸したお金が返ってこなければ、その損失は重大な問題になります。

だから銀行は、「儲かりそうな話」よりも「確実に返してもらえるか」を優先して見ます。

元銀行員の方はそのことをシンプルに話してくれました。自分が審査をしていたとき、事業の将来性よりも先に、返済原資がどれだけ安定して確保できるかを見ていたと。「儲かる計画だから貸してほしい」という話は、融資の現場では刺さらないのだと。

これは頭では理解していました。でも、実際に審査側にいた人から聞くと、腹落ちの仕方が違いました。

投資家が気にすること銀行が気にすること
表面利回り・実質利回り確実に返済できるか(返済可能性)
キャッシュフロー債務償還年数
将来的な値上がり担保価値・保全
レバレッジの効率借入総額とバランス
自己資金効率財務の安全性
次の物件既存借入の返済実績

※ 銀行が「これしか見ない」ということではありません。金融機関・担当者・案件によって評価軸は異なります。投資家と銀行の視点の違いを整理したものです。

ノンバンク借入をどう見るのか

話の中で、ノンバンクからの借入について聞く機会がありました。

私は現在、一部の物件でノンバンクからの融資を活用しています。銀行で融資がつきにくい案件、スピードが必要な案件では、ノンバンクの存在は実際の場面で役に立ちました。ノンバンク自体を否定しているわけではありません。

ただ、今回の話の中で気になったのは、「ノンバンクからの借入が、次の銀行融資にどう見えるか」という点でした。

元銀行員の方の話では、ご自身が審査をしていた当時、ノンバンクからの借入については慎重に見ていたとのことでした。理由としては、ノンバンクに頼ることになった経緯や、金利負担の水準、財務全体の構成などが審査上の判断材料になりうるという趣旨でした。

ただし、これはあくまでその方個人の過去の審査経験に基づく話です。融資の審査は、金融機関の方針、担当者の判断、案件の内容、借主の財務状況などによって変わります。「ノンバンク借入があれば銀行融資を受けられない」ということではありません。

私として考えるべきことは、現在の借入構成が、今後の銀行融資の相談にあたってどう見えるか、という視点を持つことだと感じました。

⚠️ 注記:本記事のノンバンク借入に関する記述は、今回お話を聞いた元銀行員お一人の過去の審査経験に基づいています。融資審査の基準は金融機関・支店・担当者・時期・案件によって異なります。特定の金融機関やノンバンクの評価を断定するものではありません。

銀行への借り換えという選択肢

今後の融資を考えるうえで、現在のノンバンク借入の一部を、信用金庫や地方銀行へ借り換えることを検討してはどうか、というアドバイスをもらいました。

借り換えのメリットとして考えられることは、いくつかあります。

まず金利の面。ノンバンクと銀行では金利水準が異なることが多く、借り換えによってキャッシュフローが改善する可能性があります。また、銀行との実際の取引実績を作ることで、次の融資相談につながりやすくなることも考えられます。法人・個人の財務上の見え方という面でも、銀行借入で整理された方が評価されやすい場面があるかもしれない、という話でした。

一方、借り換えにはコストもあります。ノンバンクへの違約金・繰り上げ返済手数料、抵当権の抹消・設定費用、新たな保証料や事務手数料、審査期間——こういった手間と費用を考えると、単純に「借り換えた方が良い」とは言えません。実際の金利差、残存期間、諸費用を試算したうえで判断する必要があります。

ただ、方向性として「銀行との取引を厚くしていく」という意識は、退職後の融資継続を考えると重要な視点だと感じました。

繰り上げ返済も選択肢のひとつ

もう一つ、繰り上げ返済についても話が出ました。

私はこれまで、不動産投資では融資を活用してレバレッジを効かせることを基本的な戦略としてきました。手元のキャッシュを使って繰り上げ返済するより、そのキャッシュで次の物件の頭金にした方が資産効率が上がる、という考え方です。

今回の話の中で気づいたのは、「レバレッジを最大化すること」と「銀行から評価される財務を作ること」は、必ずしも同じ方向ではない、ということです。

借入を積み上げていくと、債務償還年数や借入総額が膨らみます。それが次の融資審査で制約になる場面があります。一部の借入を繰り上げ返済して、財務の数字を改善することが、次の融資につながる場合もある。資産効率だけで判断するのではなく、財務の安全性や返済余力という視点も持ちながらバランスを取ることが、長期的には有効だという趣旨でした。

投資効率と財務の見え方のバランス——これは引き続き自分で考え続ける必要があるテーマです。

債務償還年数は20年程度が一つの目線

債務償還年数について、改めて話を聞きました。

債務償還年数は、大まかに言うと「現在の借入残高を、毎年の返済原資(利益やキャッシュフロー)で割ったときに何年で返し終えられるか」を示す指標です。この年数が短いほど、返済余力があると評価されやすくなります。

債務償還年数(概算)

有利子負債の合計 ÷ 年間返済原資(利益+減価償却費など)

※ 計算方法・分子分母の定義は金融機関によって異なります。あくまで概算の考え方です。

今回の話では、不動産事業であれば20年程度が一つの目線になるという話がありました。当然短い方が評価しやすく、長くなるほど審査では慎重に見られる傾向があるとのことでした。

ただし、これはあくまでその方の経験に基づく一つの目安です。金融機関によって計算方法は異なりますし、減価償却の扱いや現預金の控除なども判断によって変わります。「20年以内なら融資が通る」という意味ではありません。

📚 関連記事:融資審査で「償還力がギリギリ」と言われた——債務償還年数を初めて真剣に計算した話

健美家のコラムとも重なった

今回の話を聞いた後、健美家に掲載されている元銀行員によるコラムを読む機会がありました。「融資相談で、銀行が事業の将来性にぜんぜん興味なさそうなのには理由がある|不動産投資の健美家」というタイトルの記事です(猫山課長氏、2026年8月掲載)。

コラムの要点はこうです。投資家は、投資先の99社が倒産しても1社が大きく成長すれば回収できる。しかし銀行は、融資先が1社でも倒産すると甚大な損失が確定し、残りの顧客から得る利息で回収するには長い年月がかかる。だから、どれだけ儲かる計画でも、リスクが高いと感じれば融資に慎重になる——という内容でした。

今回の元銀行員との話と、このコラムの視点は全く同じではありませんし、同一の方でもありません。ただ、「銀行は投資家ではなく、金貸しだ。返済されることが最優先」という基本的な構造は重なっていると感じました。

一人だけの話ではなく、銀行側には一定の共通した考え方がある、という感覚を持てたことは有益でした。

退職後、借り換えを検討したい

今回の話を受けて、現在のノンバンク借入の一部について銀行への借り換えを検討したいと考えています。

本来なら、会社員のうちに進めておく方が有利な可能性があります。給与収入という収益の安定性、会社員という属性——これらは融資審査において有利に働く場合があります。退職後よりも今のうちに動いた方が選択肢が広い、という意識は持っています。

ただ、現状では仕事の都合で、平日に銀行を回る時間を確保しにくい状況です。信用金庫や地方銀行の担当者と丁寧にコミュニケーションを取りながら進めるには、ある程度まとまった時間が必要です。

そのため、無理に退職前に詰め込むよりも、退職後に時間を取り、複数の金融機関に相談しながら検討したいと考えています。ただし「退職後でも必ず借り換えられる」という保証はないことは理解しています。退職後の財務がどう評価されるかは、その時点での法人の状況や個人のキャッシュフローによっても変わります。

項目今回聞いた考え方私が今後検討すること
ノンバンク借入銀行によっては慎重に見られる可能性がある信金・地銀への借り換えを検討
借入先の構成金融機関の質も評価要素になり得る信金・地銀との取引関係を作る
債務償還年数20年程度が一つの目線(短い方が評価しやすい)法人CFを積み上げて改善する
繰り上げ返済財務改善に有効な場面がある投資効率とのバランスで判断
会社員属性退職前の方が有利な可能性がある時間的制約も考慮し退職後に対応検討

※ 上記は今回お話を聞いた元銀行員お一人の経験・考えに基づくものです。審査基準は金融機関・支店・担当者・時期・案件によって異なります。


実は、その方自身も早期退職者だった

融資の話が一区切りついた頃、会話の流れが変わりました。

私が今の会社を辞めようと考えていること、現在の職場の状況、退職後の計画についての話になりました。すると、その方から言葉をもらいました。

「それなら早く辞めてもいいのではないか」

感情的な励ましではなく、フラットな言い方でした。その方自身も、銀行を早期退職した経験があると話してくれたからです。

お話を聞く中で、その方はもともと銀行内でかなり上の立場まで進んでいたことがわかりました。ただ、上司や組織との考え方の違いなどから、ご本人の認識では希望しない配置を経験することになり、それが退職を考えるきっかけの一つになったとのことでした。

個人が特定されるような詳細は書きませんが、「上まで行っても、人生は計画通りには進まない」という話として、印象に残りました。

レールを降りても、人生は続く

その方が銀行を辞めた後の話が、私には一番大きかったです。

退職後、まったく別の業種であるホテルで約2年間働いたとのことでした。その後、大規模な不動産を保有する企業で、財務・資産管理を担う立場として仕事をしているという話でした。現在も次の活動を考え続けているとのことでした。

会社員として20年以上働いていると、出会う人間の傾向が似てきます。同じ会社、同じ業界、似たキャリア。それが当たり前になっていました。

でも今日会った方は、銀行という世界で長く生きて、ホテルに移り、今度は不動産会社の財務を担う。まったく異なる場所を歩きながら、その都度、自分の経験を活かして仕事を作り続けている。

私はこれまで、「会社を辞めたらどうなるか」という問いに明確な答えを持っていませんでした。不動産収入があればなんとかなる、とは思っていても、20年以上いた場所を離れることへの怖さは正直あります。収入、社会的信用、人間関係、融資、将来の仕事——具体的に考えると、心配になることはあります。

ただ、今日の出会いで一つ思えるようになったことがあります。

レールから降りたらそこで終わりなのではなく、そこから自分の足で別の道を歩けばいい、ということです。それは言葉として知っていましたが、実際にそうして歩いている人を目の前で見ると、感触が違います。

📚 関連記事:私がFIREを目指すことにした理由——45歳、会社員、タイ赴任から退職準備まで

FIREという言葉がありますが、私にとってFIREは「働かないこと」ではありません。会社員という一つの形に依存せず、自分で仕事や時間を選べる状態に移ること。今回会った元銀行員の方のキャリアは、銀行を辞めた後も自分の経験を活かして別の場所で仕事を続けているという意味で、その一つの形だと感じました。

新しい出会いが、自分の世界を広げてくれる

今回は不動産融資の相談をするつもりで会いに行きました。

実際、ノンバンク借入、借り換え、債務償還年数、繰り上げ返済など、今後の融資を考えるうえで非常に参考になる話を聞くことができました。銀行がリスクをどう見ているか、自分の財務が外からどう見えるかを、貸す側にいた人の視点から整理してもらったことは、普通の融資相談では得られない角度でした。

でも、振り返ってみると、一番心に残ったのは融資の話ではなかったのかもしれません。

長く勤めた会社を辞め、その後まったく違う仕事を経験し、さらにそれまでのキャリアを活かして別の場所で働いている人を目の前にしました。私はこれまで20年以上、会社員というレールの上を歩いてきました。そのレールから降りることには、今でも怖さがあります。でも今回の出会いで、レールから降りたらそこで終わりなのではなく、そこから自分の足で別の道を歩けばいいのだと思えるようになりました。

融資を増やすことも大切です。資産を増やすことも大切です。でも、それ以上に、これまで出会わなかった人と出会い、自分が知らなかった生き方を知ることにも価値があると感じています。

会社を辞めた後は、銀行、不動産、植物、海外など、これまで以上にいろいろな人と会ってみたいと思っています。そうした出会いの一つ一つが、これからの自分を作っていくのだと思います。


この出会いから学んだこと5つ

  1. 銀行は「儲かるかどうか」より「返してもらえるかどうか」を優先する——この視点の違いが融資交渉の基本
  2. ノンバンク借入が次の銀行融資にどう見えるか、という外からの視点を持つことが重要だった
  3. レバレッジの最大化と、銀行から評価される財務を作ることは必ずしも同じ方向ではない
  4. 退職後の融資を考えるなら、今の銀行との関係構築と財務改善を並行して進めることが合理的
  5. 会社員のレールから降りても人生は続く——それを頭で知るより、実際に歩いている人と会う方が、自分の中に入ってくる

私が今後行う融資改善アクション

  • 現在のノンバンク借入について、信用金庫・地方銀行への借り換えの可否と条件を確認する(退職後に時間を確保して動く)
  • 法人の収益を積み上げ、債務償還年数の改善につながるキャッシュフローを作る
  • 現在取引している信用金庫との関係を継続し、次の融資相談につながる信頼関係を作る
  • 繰り上げ返済の効果を試算し、投資効率との比較で判断する
  • 退職後の財務構成(個人・法人のバランス)を整理し、融資上の評価を意識した形にする

まとめ

元銀行員の方と話して、銀行が融資審査で見ているものがより明確になりました。利回りやキャッシュフローという投資家の視点ではなく、返済可能性と財務の安全性という貸す側の視点。ノンバンク借入の位置づけ、債務償還年数、繰り上げ返済のバランス——いずれも、自分の財務を外から見るための材料になりました。

同時に、その方自身が早期退職を経験し、その後も自分の経験を活かして働き続けているというキャリアを知ったことで、退職後の人生への見方が少し変わりました。

一つの出会いから、融資の話も人生の話も、両方動いた一日でした。


退職を考えるにあたって、銀行融資へ影響するかもしれないという不安はありますか?また、会社を辞めた後に融資をどう維持するかについて考えていることがあれば、ぜひコメントで教えてください。

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プロフィール
この記事を書いた人
さいかすたろう

さいかすたろう|45歳からの自由研究

20年以上会社員として働きながら、不動産投資と資産形成を続けてきました。現在は総資産3億円。退職後の自由な暮らしを目指して挑戦中です。同じ悩みを持つ方の参考になる情報を発信しています。

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